テーラーメイドのM5・M6ドライバーは、2019年のドライバー市場で最も話題となった一つです。このドライバーの特徴がフェースの前面から何かを注入するスピードインジェクションという手法です。
本記事では、スピードインジェクションにより、どんなことが行われているか、実際のヘッド内部の映像を発見しましたので取り上げます。
目次
スピードインジェクションとは!?
スピードインジェクションとは、フェース前面にある二つの赤いビス状の部分から樹脂を注入し、反発性能をルール限界内で最大化する手法です。
樹脂と言えば、反発を高めるというより、衝撃吸収の役割を果たすと考える方が多いと思います。それは「当り!」です。
テーラーメイドのスピードインジェクションでは、レジンという樹脂をフェースの裏に注入し、反発性能を下げています。
レジンを注入して反発性能を下げて、反発性能をルール上限値に設定する!
反発性能をルール内で最大化するのに、レジンを注入して反発性能を下げるといのは、全く逆の作業を行っているようにも聞こえます。
ですが、ここがテーラーメイドの発想の優れたところです。
M5・M6ドライバーは、まず、ルール上限値を超えた状態で製造されます。当然ながら、この状態で出荷すると、素晴らしい反発性能を発揮しますが、ルール上限を超えていますので、プロはもとより一般ゴルファーも公式な競技では使用できません。
ここで登場するのがスピードインジェクションです。この動画が印象的です。
ルール上限を超えたヘッドに対して、フェース前面の左右の赤いポートからレジン(樹脂)を注入し、反発性能がルール上限値になるよる調整されます。
通常、調整と言えば、ゴルファーがシャフトを抜き差ししてロフト角・ライ角を調整したり、ウェイトの位置や重さを変えることで重心を調整することが思い浮かびますが、スピードインジェクションによる調整は、出荷前の製造工程で行われます。
スピードインジェクションが何故、画期的か?
通常のゴルフクラブは、反発性能にアタリ・ハズレがある!?
これまでのゴルフクラブは、反発性能のルール上限値を超えないように製造されていました。どうしても製品にはブレが出ますので、やや低めを狙って開発して、ルール上限値を超えない範囲で、ある一定の範囲の反発性能を有したものが正式な製品となります。
このため、ルール上限値に限りなく近いものもあれば、メーカーの製品としての反発性能の下限値に近いものも出てきます。ルール上限値に近いものは、プロなどに回されているといった噂を耳にされた方もいると思います。
スピードインジェクションは、全てが最大反発!
一方、テーラーメイドはルール上限内を目指すのではなく、まず、ルールを超えたヘッドを開発します。この点からして従来の開発手法とは大きく異なります。
その後、ルール上限内に収まるようにレジンを注入して調整しますので、全てのモデルが最大反発を有しているということになるわけです。
レジンはヘッド内部でどうなっているのか?
さて、ここまではテーラーメイドのホームページやゴルフ系メディアでも紹介されている話です。
実際にレジンはどこにどんな形で注入されているか?興味がありますよね。ない人もいると思いますが、この記事をここまでご覧になっている方は、興味があるということだと思います。
では、フェースの裏側がどうなっているか、動画がありますので見てみましょう。
こちらの動画で、ヘッド内部のフェース裏側の構造、そして、スピードインジェクションについて解説されています。英語ですが、動画ですので、見ているだけで分かります。
赤いポッチの調度裏側に、それぞれポケット状のエリアが設けられています。そして、この中にレジン(樹脂)が注入されます。
個人的には、思ったよりフルフルに注入されていまして、フルで入れてもルール上限内に収まらなかったものもあるんじゃないのか?と想像してしまいました。
M5・M6が出た時に、
「この赤いネジ部分をいじれば反発性能が上がるんじゃないのか?」
という冗談話も聞かれましたが、ネジを締めたり緩めたりといったものではなく、中の注入物が作用していて固まっていますので、ネジを触って反発性能が変わるものではありません。
以上、M5・M6ドライバーに注射器で注入しているもについて、取り上げました。(実際の製造では注射器かは分かりませんが・・・)
ちなみに、似たような手法がブリヂストンのTour B JGRドライバーでも採用されていて、実際によく飛ぶとプロにもアマチュアにも話題となっていますので、今後、進化した類似の手法が出てくると楽しみです。